物価上昇局面での値付け・値上げ対策

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2023年05月24日
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①中小企業における価格転嫁の現状と取るべき対策

中小企業を悩ませる物価上昇の波は、2021年から2023年現在まで止まることなく続いています。
新型コロナウィルス感染症拡大による経済停滞からの回復を目指す中で生じた、原材料やエネルギーの供給不足懸念に端を発し、2022年にはロシアによるウクライナ侵攻によりその影響がさらに加速しました。現在では原材料・エネルギー費に加え人材不足や物価上昇をカバーするための労務費の上昇もあり、今後もしばらくはこの状況が継続することが想定されます。
そのような中で、中小企業はコストの上昇分を価格に適正に反映できているのでしょうか。
今回は中小企業庁が発行する「2023年版中小企業白書」「価格交渉促進月間フォローアップ調査の結果」を基に、中小企業における価格交渉の現状、そのような中で中小企業が今後とるべき対策について整理します。

価格交渉の状況

価格交渉促進月間(2022年9月)フォローアップ調査の結果について」によると、直近では価格交渉の協議について、「話し合いに応じてもらえた」と回答した割合が約6割となっており、物価上昇が長引く中で発注側企業の意識も醸成されつつあるといえます。


<中小企業庁「価格交渉促進月間(2022年9月)フォローアップ調査の結果について」より抜粋>

一方で、中小企業のコスト上昇分に対して発注側が価格転嫁に価格転嫁に応じた割合(価格転嫁率)は46.9%となっており、コスト上昇分をカバーするには至っていない現状も見えてきます。


<中小企業庁「価格交渉促進月間(2022年9月)フォローアップ調査の結果について」より抜粋>

次に、「2023年版 中小企業白書」によると、中小企業における価格転嫁に関する現況について、大企業と比較して中小企業が仕入れ価格上昇分を販売価格に転嫁できていないことが示されています。


<中小企業庁「2023年版中小企業白書」第1部 第3章 第1節より抜粋>

さらに、大企業と中小企業間で価格転嫁力の規模間格差が開きつつあることも指摘されています。


<中小企業庁「2023年版中小企業白書」第1部 第3章 第1節より抜粋>

まとめると、

  • ・長引く物価上昇の影響で価格転嫁の動きは進みつつあるものの、コスト上昇分を一部カバーするにとどまっている
  • ・大企業と比較して中小企業の価格転嫁力は低く、規模間格差が広がっている

ということが言えるでしょう。

中小企業の価格転嫁力が低い要因

中小企業の価格転嫁力が低い要因として、以下の点が考えられます。
「価格交渉促進月間(2022年9月)フォローアップ調査の結果について」に記載されている、下請けGメンのヒアリングによる調査企業からの生の声を参考)

      1.受注側(主に大企業)が調達先を複数から選択できる立場にあることが多く、競合との価格競争になりやすい(価格上昇の場合他社への転注を示唆されるなど弱い立場にある)
      2.受注側から価格改定に関する詳細な根拠・説明を求められ、マンパワーの問題から対応が難しい
      3.原材料費のコスト上昇については認められるケースが多いが、労務費・エネルギー費については影響が見えにくいことから理解が得られない(自社で吸収するケースが多い)

このように、受注-発注の関係性の中で弱い立場にあること、価格上昇の根拠を示すコストが大企業と比較して高いことなどが、中小企業の価格転嫁力が低い要因であるといえます。

中小企業がとるべき対策とは

では、このような中で中小企業はどのような対策を取るべきでしょうか。
第一に、自社の収益がどのように生み出されるのか=「収益力」を分解して、それぞれどのような改善策があるかを考えることがあげられます。
その上で、次に自社製品・サービスの付加価値やコストに見合った値付けと、その変化に応じた価格転嫁=値上げを適正に行っていくことで、価格転嫁力を高めていく必要があります。

それぞれについて次回以降詳しく解説していきたいと思います。

参謀ドットコム 中小企業診断士 勝田慶

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